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研究紹介

物理的,工学的現象や経済現象あるいは生物学的現象を数学的モデルを用いて表し,これを解析する方法は広く用いられている。過去のデータや既に分かっている事実から,その現象を巧く表していると思われる数学的モデルを作り,それから予測される将来に起こる結果,事象を前もって知るのが目的である。例えば,ある生物の個体数の変化の統計的データを求めたところ,図1のようになったとする。通常,これは近似的にロジスティック方程式 latex math image の解曲線,即ちロジスティック曲線で表されるということになっている。ただし,latex math image, latex math imageはある正の定数としている。つまり,時刻 latex math image におけるその生物の個体数 latex math image の増加率(増加率がマイナスの値である場合は実質上,減少率でもある)がその瞬間における個体数 latex math image によって表されると仮定されている。しかし,図を見て明らかなことは,個体数 latex math imageがロジスティック曲線のように単調には増加していないで,いわゆる揺れを持って変動しているということである。もし,この状態をより正確に表現しようとすると,通常のロジスティック方程式で数学的モデルを作っても巧くいかない。そこで,増加率 latex math image が時刻tにおける個体数 latex math image ではなく,ある一定の時間 latex math image だけさかのぼった時刻 latex math image における個体数 latex math image の式として表された方程式 latex math image のように,時間遅れ latex math image を持つ微分方程式としてロジスティック方程式を作り直すと,上に述べたような揺れる曲線を解曲線として持つ方程式が得られる(図2)。このように,現象をより正確に表現しようとしたとき,従来の微分方程式(時刻 latex math image における latex math image の増加率 latex math image が,その瞬間における latex math image の1次式や2次式として表されている場合が多い)よりも時間遅れを考慮した微分方程式を用いる方が適している場合がある。しかし,時間遅れを持つ微分方程式は同じような形をした通常の微分方程式よりも,扱い上,困難なことが多く,そのため,一見簡単と思われる方程式であっても,意外と分かっていないものが多いのが現状である。従って,数学的解析が困難な場合はシミュレーション(コンピュータによる数値計算)により,おおよその状態を推測するという場合もある。

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