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作図問題

 中学, 高校で平面図形についていろいろな性質を学び, 図形の問題を解いたりしたことがあると思います. そこに現れる図形は直線, 三角形, 四角形, 円などであり, 定規とコンパスで作図できるようなものが多いですね. 角の二等分線や正三角形などは, 定規とコンパスによって作図できることが容易にわかります.
 このような数学は, ユークリッド(紀元前330-275年頃)が著した『原論』を基にしたもので, ユークリッド幾何といわれています. さて, 次のような作図問題があります. ただし, 長さ1の線分は最初に与えられているものとします. また, 定規は目盛りがなく, 2点を結ぶためと線分を延長するためにのみ用いられ, コンパスは円を描くためにのみ使用されます.

問題1 任意の角の三等分線は作図可能か.
問題2 latex math image を 2 より大きい素数とするとき, 正 latex math image 多角形は作図可能か.

 問題1 については, 「不可能である」というのが正解です. これはすでに紀元前から考えられていた問題ですが, 1837年にやっと解決されました. 問題2 については, 正5角形の作図法は紀元前から知られていました. 辺の数が素数で5より多い正多角形については, 1796年, 大数学者ガウスが18歳のときに正17角形の作図を達成しました. まもなく彼は, 素数 latex math image に対して, 正 latex math image 多角形が作図可能であるためには, latex math imagelatex math image (latex math imageは自然数) と表わされることが必要十分であることも証明しました. したがって, 辺の数が素数の作図可能な正多角形で, 正17角形の次のものは正257角形ということになります. 上述のような一見簡単に見える問題の解決のために, 2000年以上もかかったことは驚くべきことですね.

 実は, これらの問題は, 最近, 本学の教員志望の四年生の卒業研究のテーマとして選んだもののうちの二つです. これらは, 問題自身が興味深いばかりでなく, 過去の偉大な数学者達によってどのようにして解決されたのかを理解することにより, 数学を学ぶ上で重要なことは何かということを私達に教えてくれます. また, その証明は初等幾何と初等代数の範囲内でできるものなのです. 数学は, 意味もなくただ計算ををするだけのものでなく, また難しい数式や公式を覚えるだけのものでもありません. なんといっても, 学ぶ対象に興味をもてることが大切だと思います. それが知的探究心や数学の他分野への応用についての関心を刺激する源泉であるのだろうと思います.

 なお, 作図についての基本的な事項を, 簡単に説明しておきましょう.

  1. 線分 AB の中点 M を作図できます(図1).
  2. 直線 latex math image 上の点 H において latex math image の垂線を引けます(図2).
  3. 直線 latex math image 上にない点 A を通る latex math image の平行線 latex math image を引けます(図3).
  4. 長さが自然数 n の線分を作図できます.
  5. 3, 4より, 長さ latex math image の線分を作図できます(図4).
  6. 3, 4, 5より, 長さ latex math image の線分を作図できます(図5).
  7. 1, 2 より,長さ latex math image の線分が与えられれば,長さ latex math image の線分を作図できます(図6).
  8. latex math image が作図可能な数であれば latex math image次方程式 latex math image の解も作図可能な数です.
    中点.jpg  垂線.jpg
    図1: 線分ABの中点Mの作図    図2: Hにおける直線 latex math image の垂線PHの作図
    平行線.jpg  n分の1.jpg
    図3: Aを通る直線 latex math image の平行線 latex math image の作図     図4: latex math image の作図
    n分のm.jpg  root.jpg
    図5: 有理数 latex math image の作図                  図6: latex math image の作図

 このように作図できる数の範囲を次々と拡大していって,求める数がその範囲内に存在するかどうかを代数的に考察して,作図可能性を調べます.例えば,問題2では, latex math image が作図可能な数であることを示せればよいわけです. また, 問題1では, latex math image の長さの線分が与えられたとき, latex math image が作図可能な数かどうかを考察すればよいのです.